「現金主義」と「発生主義」の違いとは?|各主義の帳簿のつけ方


現金主義とは

確定申告を行っていく際に、「現金主義」という言葉を聞くことがあります。現金主義とは会計の中において「実際にお金の出入りがあった取引」の事を指します。至極簡単に申し上げるなら「お店でジュースを買うのに100円を支払った」という取引こそが現金主義であって、「後でお金払うからジュース買ってきて」というものは現金主義ではありません。

フリーランスの方の場合で考えると、上記の例のように、

[仕事で得た報酬-仕事上で必要になった備品=利益or損失]

という、実際の現金の動きによって帳簿を記入するため、自身の事業におけるお金の動きについて把握しやすいというメリットがあり、このような会計方法を「現金主義会計」と呼びます。

ただし、デメリットもあります。例えば、仕事で長期間使用するPCやサーバーなどについては減価償却による経費計上が認められていますが、ここには現金の出入りが発生しているわけではないため、帳簿に記入する事ができません。また、売掛金や買掛金といった金銭のやり取りに時間を要するものについても、実際の現金のやり取りがあって初めて記帳できることとなります。

つまり、リアルタイムで帳簿に記入する事ができないという点がデメリットとなります。

現金主義と発生主義の違い

さて、現金主義会計に対して「発生主義会計」というものがあります。現金の実際の出入りを記帳するのが現金主義会計なのであれば、発生主義会計は「取引や費用の発生が確定したという事実を記帳する」という事を指します。

つまり、現金主義の項で申し上げた「後でお金払うからジュース買ってきて」は、言い換えるなら「買掛金」にあたりますので、発生主義会計であればこれを帳簿に記載する事ができます。

もちろん、買掛金だけではなく、減価償却費や売掛金といったものが記帳しておけるため、後になって「忘れてた」という失敗を防ぐことができます。とはいえ、発生主義会計の目的は、記帳の失念を防ぐためのものではなく、リアルタイムでの取引を記帳していく事にありますから、月々の損益について正確に把握できる上、今後の納税額の予測も立てやすく、今後の事業資金をどうしていくべきかという戦略を立てるのにも有効です。

しかしながら、デメリットがないわけではありません。発生主義においてはリアルタイムな取引が記帳できるとは申し上げましたが、「リアルタイムな現金の動き」については把握しづらいという弱点もあります。また、記帳の方法も複式簿記という方法での記帳になるため、慣れるまでに時間がかかるという点においてもデメリットと言えるかもしれません。

簿記での帳簿のつけ方

現金主義会計と発生主義会計について、簡単に違いをご説明させていただきましたが、実際の簿記での帳簿付けはどのようにすべきかという点をご説明させていただきます。ただその前に、簿記の基礎である「借方」「貸方」について覚えておきましょう。

再度、前記の「100円のジュースを買った」という、今時聞かない値段のジュースを購入したという取引で分かりやすくご説明させていただきます。

まず「借方」ですが、簡単に言うなら「資産の増減」のことを指します。つまり、ジュースを買ったので「100円という価値のジュースを手に入れた」ということですが、言い換えるなら「ジュースという資産が増えた」ということになります。これが借方です。

対して「貸方」ですが、「負債や純資産の増減」の事を指します。これは、ジュースを買った事により、「現金の100円が無くなった」ということですから、言い換えれば「100円という資産が減った」ということになります。これが貸方です。

これらの基礎知識を踏まえて、ここでは仮に、クレジットカードを使って仕事に必要な消耗品を購入したというケースと、商品を仕入れて売るような仕事をしているというケースで、現金主義会計と発生主義会計の帳簿のつけ方を解説いたします。

1:現金主義の場合

もし、クレジットカードで1万円分の消耗品を購入したとして、購入日が5月1日、購入費用が引き落とされるのが5月末日だった場合、帳簿を付けるとしたら以下のようになります。

5月31日/借方 消耗品費10,000円/貸方 預金10,000円

現金主義会計の場合、実際にお金のやり取りが発生した場合についてのみ記帳すると申し上げたとおり、消耗品を購入した日の事は何も記入せず、5月末日に預金から商品代が引き落とされた日しか記入しません。

では次に、5月1日に一つ1万円の商品を10個仕入れ、5月15日に仕入の費用を支払い、そのうち3個が5月25日に2万円で売れ、5月31日に商品代金が入金されたという場合について見てみましょう。つまり、仕入れの際は買掛、商品の売り上げは売掛というケースということになります。

5月15日/借方 仕入100,000円/貸方 現金100,000円
5月31日/借方 現金60,000円/貸方 売上60,000円

やはり現金のやり取りが発生した時点で、お金の出入りが確認できるため、簿記でよく見る複雑な書き方はしません。
では続いて、発生主義の帳簿のつけ方を見てみましょう。

2:発生主義の場合

発生主義の基本を改めて申し上げますと、「取引や費用の発生が確定したという事実を記帳する」ということです。その前提を思い出しつつ、前記同様、クレジットカードで消耗品1万円を買って、末日に引き落とされた場合の帳簿のつけ方を見てみましょう。

5月1日/借方 消耗品10,000円/貸方 未払い金10,000円
5月31日/借方 未払い金10,000円/貸方 預金10,000円

発生主義の場合は、まだ発生していないお金についても記入する(記入できる)というのがメリットですが、このように取引発生の都度、帳簿をつけていく必要があります。

そして次に、こちらも前記同様、5月1日に一つ1万円の商品を10個仕入れ、5月15日に仕入費を支払い、3個が5月25日に2万円で売れ、5月31日に売上金が入金されたという場合の、帳簿のつけ方を見てみましょう。

5月1日/借方 仕入100,000円/貸方 買掛100,000円
5月15日/借方 買掛金100,000円/貸方 現金10,0000円
5月25日/借方 売上 60,000円/貸方 売掛60,000円
5月31日/借方 売掛60,000円/貸方 売上60,000円

以上は、あくまで帳簿のつけ方をベースとした例ですので、バランスシート(貸借対照表)の考え方は考慮していません。

しかしながら、発生主義のメリットやデメリットのお話の際にも申し上げましたが、慣れるまでに少々時間がかかるという難点はありつつも、これらの事実をバランスシートに適用させると「収入」「支出」「資産」「負債」の状況が一目でわかる、つまり、会社を経営しているのであれば、経営状態の把握ができる非常に便利なものなのです。

ここまで現金主義と発生主義についてお話しさせていただきましたが、ほとんど経費が発生しないようなフリーランス方でも、この発生主義の基本に沿った帳簿をつける必要があるのか疑問が湧いてきます。そこで、次の項では「青色申告」「白色申告」の別で、現金主義と発生主義のどちらを適用させるべきかを考えてみます。

青色申告では現金主義?発生主義?

まず、青色申告においては発生主義に基づいて確定申告を行う必要があります。「なぜ?」と思われるかもしれませんが、これは「企業会計原則」に則った結果であると言えます。

この、企業会計原則の中に「発生主義の原則」という決まりがあり、以下のように定められています。

「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。」
以上のことから、会計の世界ではこの原則に沿った処理が行われています。

そもそも、「確定申告の際には発生主義の帳簿を付けなさい!」と国税庁が声を大にして言っているわけではなく、企業会計原則にも法的な強制力があるわけでもありません。

しかしながら、会社法では「一般的に公正妥当と認められる会計方法に従うこと」と定められていることから、ほぼ全ての企業や確定申告においては発生主義会計が行われていると考えられます。

ただし、以下の要件を満たせば、青色申告に限って現金主義での帳簿付けが認められています。

  • 前々年の所得が300万円以下の小規模事業者
  • 「所得税の青色申告承認申請(兼)現金主義の所得計算による旨の届出手続」にて、事前の承認を受けている。

白色申告では現金主義?発生主義?

「青色申告では発生主義が原則」と、まるで青色申告と白色申告で、現金主義と発生主義の適用方法が明確に分かれているかのようなお話をさせていただきましたが、青色申告でも白色申告でも、確定申告の基本は「発生主義」と考えていただいた方が良いかと思います。

むしろ、発生主義での帳簿を付ける事が義務と考えるべきとも言えます。
何故なら、既述のとおり、確定申告や会計処理を行うにあたっては、一部の場合を除いて発生主義が原則となっているためです。

ただ、日本の会計の歴史などを探っていくと、以前までは現金主義が主流だったため、未だに「比較的申告が簡単な白色申告なら現金主義での確定申告が可能」と言う方がいらっしゃいますが、これは間違いであり誤解です。白色申告は発生主義での記帳と決められています。

やはり確定申告における帳簿付けは、全てにおいて発生主義を前提とする必要があり、現金主義が許されるのは個人的に使用している帳簿の帳簿やメモの範囲といった認識をしていただいた方が良いでしょう。このようなお話では「世の中がそのようになっているから、それに従うべき」と言っているようにも思えるかもしれませんが、その認識で間違いではありません。

しかしながら、何度か申し上げましたとおり、会社や事業の状態を確認、把握するには発生主義であることが望ましく、確定申告を含めてほとんどの会計処理が発生主義で行われている事を考えると、独自の考えを貫き通して現金主義を選ぶことにはあまりメリットはないかもしれません。

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