簡易課税制度の消費税の計算方法|事業区分・届け出について


簡易課税制度とは

「簡易課税制度」。あまり耳にすることのない名前ですが、フリーランスで働かれている場合は是非とも覚えていただきたい制度です。簡易課税制度とは何かをご説明させていただく前に、身近にある消費税について、おさらいの意味も兼ねてお話しさせていただきます。

まず、私達が日々の生活の中で何の疑問もなく払っていて、ニュースでも何かと取り沙汰されてきた消費税ですが、そもそも消費税とは何に対する課税なのか、また、誰が納税者なのかといったことを聞いてみると、意外なことに自分の言葉で説明できる人は多くありません。

この、消費税とは、簡単に申し上げると「モノやサービスを購入(消費)したことに対する課税」です。つまり、コンビニでお菓子を購入したなら、お菓子というものの価値である「価格」の8%分が消費税、引っ越し屋さんに引っ越しを依頼したならその「サービス提供に対する対価」の8%が消費税です。

そして、消費税を支払うのはお菓子を購入、お金の支払いの代わりに労働力を得た消費者は税の「負担者」ですが、お菓子を売ったお店、労働力を影響した引っ越し屋さんは「納税者」ということになります。

さて、そんな消費税もフリーランスの方が仕事を受注、納品をした後は、クライアントへ消費税込みの報酬を請求する事となりますが、報酬を受け取った側に納税義務がありますので、日々の帳簿付けはマメに行う必要がありますし、もしギリギリになって計算して金額を誤ったり申告漏れにならないように注意が必要です。
ただし、日々の業務で受けとる報酬は様々ですし、件数が多くなると、通常業務に支障が出るほど時間を取られることもあります。

そこで、大変便利に活用できるのが「簡易課税制度」です。
この、簡易課税制度は「大体このくらいの割合で納税額を計算してください」という風に、「みなし仕入率」というものを元に、簡単な計算で算出される金額を納税する制度で、税務に関する労力を軽減できる他、場合によっては節税になる事もあります。

簡易課税方式の消費税の計算方法

では、簡易課税制度により、労力の軽減や節税という面でどのくらいのメリットがあるかという点についてお話させていただきます。その前に、実際に納付すべき消費税の計算方法について理解しておく必要があります。まず、普段の生活の中では単純に「買った物の値段×8%」というように計算します。

よって、同じく納税額も「収入額×8%」としたいところですが、納税においての計算方法としては正しくありません。事業を行うという事は単に仕事をして収入を得るというだけがプロセスではありません。仕入れを行い、加工し、販売するというのが一般的な事業の流れとなりますので、納める消費税は事業で得た報酬で受け取った消費税から、仕入れの際にこちらが支払った消費税を差し引いた額を納税する事となります。

売上で徴収した消費税-仕入れで支払った消費税=納税額

これが、本来の納めるべき消費税額の計算方法となります。では、実際に簡易課税方式による納税額はどのように計算するのか、具体的な例を踏まえて解説させていただきます。本来の消費税の計算を簡単にしたのが簡易課税制度というわけですが、簡易課税制度による計算方法は以下のようになります。

売上で徴収した消費税額-(売上で徴収した消費税額×みなし仕入率)=簡易課税消費税額

既にご説明させていただいているとおり、「大体これくらいの仕入れ負担として計算してください」という計算式になっているのがお分かりいただけるかと思います。
では、「みなし仕入率」がどういった割合になっているのか見てみましょう。国税庁のホームページを確認すると以下のような割合が提示されています。

第一種事業:90%
第二種事業:80%
第三種事業:70%
第四種事業:60%
第五種事業:50%
第六種事業:40%

仮に、ITフリーランスが消費税込みで1080万円の売り上げがあった場合、ITフリーランスの方は第五種事業にあたるため、簡易課税方式で納税額を計算するのであれば、以下のようになります。

税込売上1080万円-税抜売上=80万円
80万円×みなし仕入率50%=40万円
80万円-40万円=40万円

そもそもITフリーランスで仕入を行うという事も少ないかもしれませんが、本来の計算方法による納税額が半分に抑えられるのは、紛れもなくメリットと言えるでしょう。

参考:国税庁「簡易課税制度」

簡易課税制度の事業区分

さて、上記までに簡易課税制度の簡単なご説明をさせていただきましたが、フリーランスの方が簡易課税制度を利用するにあたって最初に確認されることは「はて、自分の業種は何か」という事でしょう。上記までの例でITフリーランスの方を第五種事業として計算していますが、この事業区分も先ほどもご紹介させていただいた国税庁のホームページの「簡易課税制度の事業区分」というもので明確に区別されています。その内容は以下のとおりです。

第一種事業:卸売業

仕入れた商品をそのままの形で他の事業者に販売する事業。

第二種事業:小売業

卸売業から仕入れた商品を、そのままの形で消費者に販売する事業。

第三種事業:農林水産業、鉱業、建設業、製造業(製造小売り含む)、電気ガス水道関連事業

お主にインフラ関連の事業を行うものと考えていただいて差し支えありません。

第四種事業:第一~三種、第五、六種以外の事業

飲食業が主なものですが、第三種に関連するが加工やその他の工程を経て対価が得られるような事業は第四種となります。
例えば、ミカン農家を営んでいるが「ミカン狩り」としてその場で食べられるような事業を営んでいる場合は第三種事業にあたります。

第五種事業:サービス業、通信、金融保険業

通信関連もインフラにあたりますが、第一種事業から第三種事業に該当する場合は通信業は第五種には該当しません。

第六種事業:不動産業

平成27年の法改正により、第五種事業にあった不動産業は第六種事業という新しい枠組みでの事業区分が適用される事となりました。

以上の事から、IT関連のフリーランスの方やデザイナー、ライターといった方々は第五種事業として計算していく事が多いかと思いますが、詳しくは税務署等に問い合わせてみましょう。

参考:国税庁「簡易課税制度の事業区分」

簡易課税制度の届出の方法

日々、業務と並行して帳簿を付けていれば別ですが、個人事業主であるフリーランスは何も消費税だけを納税していれば良いわけではなく、経費の計算や専従者や従業員への給与計算から源泉徴収計算、様々な控除額計算など、本当に様々なお金の計算が必要となります。

ならば、簡易課税制度を使う事を前提として消費税納税額の計算を後回しにできれば、税務関連の事務作業が少しは楽にできますので、今年度末も安心です!
と、言いたいところなのですが、この簡易課税制度は誰もが自由に利用できる制度ではなく、予めの届け出が必須です。その届出書の名前は「消費税簡易課税制度選択届出書」と言い、管轄の税務署へ提出する必要があります。

また、簡易課税制度を適用するには届出書の提出の他にも条件があり、簡易課税制度を適用させたい年の前々年の課税売上高が5000万円以下である必要があります。もし、簡易課税制度を適用している年に5000万円の売り上げを超えた場合においては、その年のみ本来の消費税額の計算で納税する必要がありますが、次の年に再度売り上げが5000万円を下回った場合は、その期間について改めて簡易課税の手続きをする必要はありません。

尚、事業内容によっては、簡易課税制度を使わない方が金額面ではお得になるケースもあります。そういった場合に「簡易課税をやめたい!」ということで、勝手に本来の消費納税額の計算で申告して良いかというと、そうではなく、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を別途提出する必要があります。

簡易課税制度の届出の期限

簡易課税制度も簡易課税制度をやめる場合も、所定の手続きが必要という事はご理解いただけたかと思いますが、実際にそれらの届出書を提出する期限があります。

消費税簡易課税制度選択届出書:課税対象の期間の開始日の前日までに提出
消費税簡易課税制度選択不適用届出書:簡易課税制度をやめようとする期間の開始日の前日までに提出

この「やめようとする期間の開始日の前日」という言い回しは実際の国税庁のホームページにもそのように記載があるのですが、つまりは「簡易課税制度の適用を無しにしたい日の前日」という事です。

つまり、3/31まで簡易課税制度により申告して、4/1以降は簡易課税制度ではなく本来の消費税額による納税をしたいと考えるのであれば、3/31までに消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出しなければいけません。

ただし、注意点があります。簡易課税制度を適用するために手続きを行った場合、その開始日から2年間は本来の課税方式に戻すことができず、つまりは2年経過してからでないと消費税簡易課税制度選択不適用届出書の提出はできないという決まりがあります。

簡易課税と原則課税の違い

ここまで簡易課税制度の仕組みや手続き方法等についてお話させていただきましたが、そもそも、簡易課税ではない、本来の消費税の計算方法には違いがあります。

これは、「簡易課税方式の消費税の計算方法」の項でもお話させていただきましたが、「売上で徴収した消費税-仕入れで支払った消費税=納税額」というのが本来の消費税納税額の計算方法であり、この課税方式を「原則課税」と言います。

つまり、消費税には「原則課税」があり、その特例のようなものとして「簡易課税」があるということになります。そこで、改めて本来の課税方式である原則課税と、簡易課税制度の違いをまとめてさせていただくと以下のとおりとなります。

原則課税制度

売上で預かった消費税から仕入れの際に支払った消費税を差し引いて納税額を算出する。特に事前の手続きは必要ない。

簡易課税制度

前々事業年度の売上が5000万円以下で事前の手続きを行う必要があり、にみなし仕入率を掛けた仕入控除額を課税売上高から差し引いて納税額を算出する。簡易課税を適用させる日の前日までに届け出が必要。

ここまでのお話の中では出てこなかった「仕入控除額」というワードですが、つまりは消費税の納税額から差し引くことができるもので、原則課税であれば「仕入れで支払った消費税」、簡易課税であれば「売上で徴収した消費税額×みなし仕入率」の計算で算出される部分の事を指します。
尚、ここまで数字と期限が複数出てきましたので、「2015年度に簡易課税を適用させ、2017年に原則課税に戻す」という場合の時系列の流れを簡単に以下のようにまとめます。

(1)2012年度の売り上げ1200万円
(2)2014年12/31までに届出書の提出
(3)2015年は簡易課税による申告
(4)2016年12/31までに届出書の提出
(5)2017年は原則課税による申告

簡易課税と原則課税のメリット・デメリット

簡易課税の手続きでも少しお話させていただきましたが、簡易課税よりも原則課税の方が納税額が抑えられる場合もあります。つまり、今後の事業内容や収入の見通しを考えて簡易課税とするかどうかは見定めていかなければいけませんが、果たして簡易課税と原則課税にはどのようなメリットとデメリットがあるのかも見ておきましょう。

原則課税のメリット

・仕入れや設備投資等で支払った消費税が、売り上げで預かった消費税を上回った場合は還付が受けられる。
・適用期間や手続きがない。

原則課税のデメリット

・手続きや帳簿付けが煩雑になりがち。
・節税効果は無し。
・非課税の仕入れは控除できない。

簡易課税のメリット

・納税額の計算が簡単。
・みなし仕入率の計算により節税になる場合が多い。
・帳簿付けが不要。

簡易課税のデメリット

・2年間は原則課税に戻せない。
・2つ以上の事業を行う時は事業区分を分ける必要がある。
・場合によっては簡易課税の方が納税額が高くなることがある。
・消費税の還付は受けられない。

原則課税のデメリットにある「非課税の仕入れは控除できない」という部分ですが、例えば「人件費」「租税公課」「家賃」などがあります。つまり、「手続きの煩雑さや税額が高くなるデメリットはあるが、原則課税なら消費税控除額をたくさん積み増していけば還付が受けられる」という事にはなりません。

そもそも、嘘の申告は罪になりますので絶対にそのようなことを行うべきではありませんが、全ての取引による消費税が課税対象となるわけではないという事も頭の片隅に入れておきましょう。

尚、所得税法では事業の収入が赤字になるのであれば納税は不要ですが、消費税については必ず必要となります。何故なら、上記にも申し上げたとおり、非課税となる取引も存在するため、その分は納税する必要があるのです。

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